蟹について

毛ガニ
毛がに
 日本名も英名も甲羅から脚の先まではえている毛が由来になっている。仲間のクリガニ(甲幅7?B)に対し、かつてはオオクリガニとも呼ばれた。近来、漁獲の減少に伴い価格が上がり、大型のものも少ない。小売では、ケガニ丸ごと2杯が、それより大きい甲羅を持つタラバガニ1杯より高いことがある。ケガニが今日のようにもてはやされるようになったのは、実は戦後のことである。それまでは商品価値のないカニだと思われ、ごくローカルにしか利用されていなかった。ところが食料品統制を受けていた戦時中、売る商品がなくなってしまった長万部駅の構内立ち売り業者が、しかたなくゆでたケガニをを売り出したところ、終戦後、飛ぶように売れるようになったということである。
タラバガニ
タラバガニ
 鱈の漁場に棲んでいる蟹という意味である。タラバカニ漁が始まったのは、偶然による出来事からだった。鱈漁の漁船の船員が、ついうっかりと海底にまで網を下ろしてしまったところ、見慣れないカニが引っかかっていた。その当時は、食べられることもなく、捨てられていたという。タラバカニの漁には、缶詰加工機構を備えた操業船で出漁する北洋カニ漁が有名で、小林 多善二の『蟹工船』でもよく知られている。なお、タラバカニはカニとは呼ばれいても、真のカニ類ではない。カニ類は背中から見ると鋏脚である第一脚から第五まで5対が見えるがタラバカニ類は鋏を含めて4対しか見えない。また、タラバカニでは、雌の腹部は右側によじれ、内側には左側しか腹肢がないこと、生殖孔は第二歩脚の底節に開いていることなど、真のヤドカリ類と共通した特徴を持つ。したがって、タラバガニの正体とは、「カニの形をしたヤドカリ」ということになる。
ズワイガニ
ズワイガニ
 冬の日本海側、特に北陸から山陰地方にかけての味覚、北陸地方では「楚」あるいは「松葉がに」、「越前がに」と呼ぶ。楚というのは、楚の訛。木の枝や幹から細長く伸びた若い小枝のことをいう。ズワイガニの細長い脚が、小枝を連想させたのだろうか。雌は「香箱蟹」、「勢子蟹」と呼ばれる。雌は小型で身が少ないが、卵と味噌が旨い。卵巣は、甲羅似付いている未成熟卵お「内子」、雌腹部に抱えられている成熟卵お「外子」という。 市場には、ズワイガニのほか、仲間ノベニズワイガニもよく並ぶ。甲羅の形が三角なので、区別できる。ベニズワイガニはゆであげても、生きているときからかなり赤いので、あまり変わりがない。身肉に水分が多く、ズワイガニの代用にされるが味はズワイガニよりやや劣る。また、輸入もののマルズワイガニは、身肉がすこし赤みがかかっている。